任意整理の手続きの流れとかかる期間を解説
借金が増えて毎月の返済が手に負えないぐらい負担になってしまったとき、任意整理をすることで無理のない返済ができるようになる場合があります。
では、任意整理をすることでメリットを受けるのはどんな状況の人でしょうか。
また実際に手続きをするとなると、どのような流れで行われるのか、期間はどのくらいかかるのかなど知っておきたいこともあるはずです。
そこで借金問題にかかわる対処方法の中でも特に任意整理について、注意点も合わせて説明していきます。
任意整理を行うと良い人
任意整理は、債務者と債権者が交渉することによって、利息のカットや返済額の見直しを目指す手続きです。
裁判所を介さないために手続きが簡単で負担も少ないのがメリットです。任意整理する対象を選ぶことが可能なのも特徴です。ただし、債権者と合意する必要があり、借金を大きく減額することができないデメリットもあります。
任意整理がオススメな人は、借金の額がそれほど大きくない人です。借金が少ないのであれば、負担の少ない任意整理から検討すると良いでしょう。
また、車のローンや保証人がいる借金など債務整理から外したい借金がある人にもオススメです。
他の債務整理の手続きでは全ての借金を対象にしますが、任意整理では対象にする借金を選べるので、車を手元に残すことができたり、保証人に迷惑をかけずに済みます。
任意整理の手続きの流れと期間の目安
STEP1, 面談・相談
任意整理を弁護士や司法書士といった専門家に依頼する場合には、まず面談か相談をすることが大切です。
面談・相談の方法については事務所によっても異なりますが、「電話」・「メール」・「訪問」のいずれにも対応していることがほとんどで、無料での相談を行っているところも多くあります。
ただし訪問をする場合は、電話かメールで予約をしておいた方がスムーズです。
実際の面談や相談では、現在の自分の状況を話すだけではなく任意整理の流れや料金体系などについても深く話を聞いておいた方がいいでしょう。
STEP2, 委任契約
面談や相談をしてみて、事務所の対応や専門家の印象が良ければ任意整理を依頼する流れになります。依頼を行う際には通常「委任契約」を結ぶことになります。
委任契約とは、専門家に自分の「代理人」として行動してもらうための契約のことであり、これを結ぶことにより専門家は依頼人の法律行為を本人に代わって行えるようになります。
委任契約は専門家にとっても強い法律上の権限を与えることになるので、トラブル防止のためにも自分に代わって専門家が「どのような法律行為が行えるか」などをよく確認することが大切です。
STEP3, 受任通知の送付、債権調査
任意整理の場合、委任契約が結ばれると専門家は貸金業者などに受任通知を送付する流れとなります。
受任通知とは、専門家が依頼人の「代理人」として貸金業者からの取り立てや督促に対応することを明示した書類のことで、これ以降依頼人に対して直接の取り立てや督促は行われません。
これは貸金業法に定められていることのため、もし違反する業者があれば「2年以下の懲役、300万円以下の罰金あるいはその併科」となり、貸金業の業務停止や登録取り消しとなる可能性もあります。
STEP4, 取引履歴の開示請求
任意整理の流れとしては「取引履歴の開示請求」による債権調査となります。
通常であれば受任通知と一緒に「取引履歴の開示を求める文章」が添付されていることが多く、受任通知と取引履歴の開示請求は同時に行われます。
取引履歴とは、貸金業者と依頼人の間で行われた貸付や弁済の記録のことで、依頼人の借金が実際どのくらいあるのかを確かめるために利用されるものです。
この取引履歴が開示されることで、専門家はどのような方針で任意整理を進めていくかを決定します。
STEP5, 引き直し計算
引き直し計算は任意整理の流れにおいて、借金を大きく減額できるかどうかを分ける重要なポイントになります。正確な債務額を確定させることで返済について方針を決めることができます。
引き直し計算とはグレーゾーン金利を本来の正しい金利(利息制限法の上限)に戻した上で、余分に支払ってきた利息の部分を元本の返済に充てたものとみなして借金の総額を計算し直すことです。
この引き直し計算には複雑な計算が必要なため、ソフトなどを使い自分で計算をすることもできますが、正しい数字を出すためには専門家の力を借りるのが一般的になっています。
2007年以前に借入をしていた人であれば、引き直し計算の結果によっては借金の額が大幅に減額されるだけではなく、元本の返済が既に終わっていて過払い金が発生している場合もあります。
STEP6, 和解交渉開始
債権調査と引き直し計算が終わると、任意整理の次の流れとして専門家と債権者の間での本格的な和解交渉が始まります。
弁護士や司法書士の能力が最も発揮される場面であり、多くの場合、専門家は経過利息と将来利息の免除に加え、現実的な返済額を前提とした長期分割払いを求めた交渉を行っていきます。
経過利息とは債権者に受任通知を発送してから和解成立までの利息のことで、将来利息とは和解成立から返済完了までの利息のことです。 これらの利息の免除をできるかどうかは専門家の腕次第です。
STEP7, 和解成立
和解交渉がまとまると、次は和解成立の証拠として貸金業者との間で「和解契約」を結ぶのが任意整理の流れとなっています。和解契約とは貸金業者との間でどのような金利で、どのような計画で返済していくのかを定めたものです。
この和解契約にこぎつけるまで、専門家への相談から約3か月~半年程度がかかるとされています。
この間、依頼人としては基本的に何もすることがないため不安になりやすいです。もし不安なことがあれば、しっかりと専門家に連絡して進捗を聞くようにしてみましょう。
STEP8, 債務の支払い開始
和解契約が成立すると、その契約に基づいた額を改めて返済していく流れになります。返済額はおそらく現在の収入を基準に現実的に支払える金額まで抑えてあると考えられるので、大変でもしっかり払っていくことが大切です。
任意整理の手続きは以上となりますが、任意整理を行った場合でも個人信用情報には「事故情報」として掲載されます。
新たにカードローンを申し込んだり、クレジットカードを作成したりといった行為はかなり制限されるので注意しなければなりません。
任意整理の手続き期間の知っておくべきポイント
着手金の支払いが終わらないと交渉に入らないケースがある
任意整理の専門家費用のうち着手金については、和解後ではなく交渉期間中に支払う必要があります。
着手金は、債務先1社につき数万から5万円程度に設定している事務所が多いですが、正式契約後、交渉期間中に分割払いで支払うのが一般的です。
任意整理を専門家に正式に委任すると、債務者への取立てを止めるよう債権者に受任通知が送付され、任意整理の交渉期間に入ります。しかし、着手金が全額支払われるまで、実際の交渉に入らない事務所もあります。
一方、実際の交渉が開始されなくても、債権者側では取立てもできず債務者からの返済もありません。
このように、任意整理交渉期間の長期化は債権者には不利な状況なので、訴訟を起こされる可能性もあるため注意が必要です。
任意整理の交渉期間中は待つだけ
任意整理では、債権者との交渉は全て弁護士や司法書士が依頼者に代わって行います。任意交渉成立まで、依頼者に一切連作しない事務所も少なくないため、連絡がなかったとしても心配する必要はありません。
他の債務整理とは異なり、依頼者が関わる手続きが不要なのは任意整理の大きなメリットです。
しかし、交渉期間中に専門家から何の連絡もないと、交渉が進んでいるのか不安に感じる依頼者もいます。依頼者側から事務所に連絡すれば、いつでも進捗状況を聞くことができます。
専門家費用の支払いスケジュールや依頼内容によって変動しますが、平均的な任意交渉期間は3から6カ月です。事務所への連絡を迷っている場合は、この期間を目安にしてください。
任意整理をした後の返済期間の目安
任意整理後の返済期間は基本的には3年
任意整理の返済期間は基本目安は3年間です。これは裁判所が提案する個人再生という債務整理が3年の調停案を原則にしている事が理由の一つです。
また3年間が経過すると債務者の経済状況も変化して、支払い能力に影響が与えると考えられて設定している年数でもあります。
最長5年まで返済期間を延ばすことができることもある
任意整理を行い、返済期間3年間で設定して、月々の返済額が収入の半分を超える場合などの時は、支払い能力を考えて5年間の返済期間を設定する事もできます。
任意整理の返済期間は「最長5年間」とする専門家も多く、自分の生活を考え、専門家としっかりと相談の上で決定して下さい。
返済期間を長く設定する事で無理なく返済ができ、整理後の生活も安定したものとなります。
しかし、返済期間は債権者の立場からすると出来るだけ短くしたいと考えている為、その期間は専門家の交渉能力によっても違ってきます。 最終的には債権者がその支払い期間に納得する必要があり、出来るだけ実務経験が豊富な専門家に依頼する事が重要です。
任意整理後の債務返済期間中の押さえておくと良いこと
支払いに遅れない
任意整理をする場合、弁護士や司法書士が本人に成り代わって交渉を進めていきます。このときの依頼費用と借金の返済で2重に支払いが発生して返済が苦しくなるのでは、気にかけている方も多いのではないでしょうか。
ですが、この依頼料は分割払いと後払いができるので心配はいりません。
任意整理を専門家に依頼すると受任通知が金融会社へと送致されます。この時点から借金の支払いはストップするので、任意整理の交渉が終了するまでの間に返済に当てていたお金で費用を分割払いできます。
後払いのケースは、交渉がまとまった後にも分割回数を引き伸ばして支払いが可能です。
しかし、この交渉をしている最中に支払いを滞納してしまうと、専門家にこの人は支払いをしっかりとしていけない人物なのではないかと判断されて、代理人を辞任するといったことも起こりえます。
弁護士や司法書士は職権で引き受けた依頼を中途で降りる権利を有していますので、注意しましょう。
繰上げ返済はできる
無事任意整理の交渉で和解が成立すると、以前よりも毎月の返済額が減らされているので経済的な負担はかなり軽くなります。
このため、借金の完済を早めようと繰上げ返済をする方がいます。ですが、多くの場合で利息が免除されているので、返済を早めたからと返済総額に変わりはなくさしたるメリットはありません。
せっかく任意整理で負担を減らせたのに、返済額を増やしてしまうと以前の苦しい状態へと逆戻りしてしまいます。ですので、返済期間を早めようとせずに毎月きちんと期日を守って返済することを第一に考えましょう。
任意整理後にブラックリストに入る期間とは?
ブラックリストとは
任意整理をすると「ブラックリスト」載ってしてしまいます。
ブラックリストとは、借りたお金の返済滞納が続いた場合、あるいは自己破産などの債務整理を行った時に、個人信用情報機関の個人信用情報に事故情報が登録されてしまうことです。
この登録された状態をブラックリストに載ってしまうと呼んでいます。
ブラックリストに載ってしてしまうと、登録された利用者の情報は金融機関で確認できることになります。よって他の金融機関から借り入れをしようとしても、返済能力がない人物と発覚しているため借り入れができなくなり、あらゆるローンも一定期間組めなくなります。
ブラックリストに載ってしまう期間は5年間
任意整理は返済に困ったときの手段ともいえます。
任意整理をすると「返済能力のない人物」としてブラックリストに載ってしまいます。
個人信用情報機関は、日本信用情報機構(JICC)、CIC、全銀協(KSC)の3つの機関があります。
任意整理をした時、それを事故とみなしブラックリストに登録をするのはJICCのみです。
CIC、全銀協には任意整理をした記録が登録されることはありません。任意整理をする際、債務者の代理人が債権者に受任通知書を送った時点で、個人信用情報機関の参考欄に債務整理として登録されます。
JICCに登録されると、登録された日から5年間はブラックリストから個人情報が消えることはありません。
任意整理は同じ債務整理の種類である自己破産などと違い、裁判所の関与がありません。CIC、全銀協はそれを判断材料として事故扱いをせずに登録をしないことになっています。
3つの機関は、それぞれ事故として登録する基準が異なります。
ブラックリストに載っている間のデメリット
任意整理によりブラックリスト入りすると、すべての金融機関でその情報が共有されます。よってあらゆる融資が利用できなくなることが、ブラックリスト入りしてしまった場合のデメリットです。
たとえば、今まで利用していなかった消費者金融で新規の会員になろうとしても、返済能力のない人間として情報が届いているので新規のカードを作成することができません。
また新規のクレジットカード会社でも同様です。
そして住宅・車などあらゆるローンを組もうとても審査が通らなくなります。
しかし、任意整理の場合は5年たてば記録が消えるため、再び利用できるようになります。消えているかどうかは個人情報機関に開示請求をすれば確認することができます。
まとめ
任意整理を行った時のメリットとしては借金の減額がありますが、一方で一定期間借金ができなくなる、といったデメリットも存在します。
任意整理をする際の大まかな手続きは、債務調査から始まります。その結果から整理案を作成、その整理案をもとに債権者との交渉を行っていきます。
任意整理の手続きにかかる期間は3か月から6か月程度です。任意整理は債権者との交渉次第で結果が変わります。
そのため基本的には専門家に依頼することとなります。その際債務整理を専門にしている事務所や、確かな実績のある事務所を選部事が大切になります。
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