知っておきたい任意整理の費用
任意整理を弁護士や司法書士に依頼する場合は、あらかじめどれくらいの費用が必要になるのかを把握しておくことが大切です。
基本報酬以外にも相談料や着手金など、さまざまな費用が発生します。
さらに法テラスを活用することで費用を抑える方法や、自分で特定調停を行う方法も知っておくと、いざという時に役立ちます。
今回は任意整理関の費用に関する知識を紹介するので、任意整理を依頼する予定の方はぜひ参考にしてみてください。
任意整理で必要な費用
相談料
相談料とは、弁護士事務所や司法書士事務所に任意整理を依頼する前に相談すると発生する費用のことです。
相談することで過払い金が発生しているかどうか、どの位借金が減るかなどを知ることができます。事務所によっても異なりますが、1時間で5000円~1万円が相場となっています。
初回相談は無料、電話やネットで相談できるサービスを行っている事務所もあります。また相談料は無料としている事務所も多くあります。まずは問い合わせてみるようにしてみましょう。
着手金
着手金とは、正式に任意整理の依頼をその事務所に依頼する際に発生する費用のことです。基本的には、受任契約締結後に支払うことになります。
着手金は「依頼にかかる費用」であり、交渉が成功してもしなくても発生します。
任意整理の場合、着手金は債権者の数によって費用が変わります。通常債権者1社あたりの相場は、2~5万円程度となっています。
場合によっては、分割払いや後払いを認めてくれる事務所もあります。また着手金無料の事務所も増えています。
注意点として途中で契約を解除しても、基本的に着手金は戻ってきません。そのため依頼する事務所を慎重に選ぶことが大切です。
基本報酬
基本報酬とは、債権者との問題が解決して和解した際に発生する費用のことです。基本報酬の総額については、対象となる債権者の数で変わります。
任意整理では「債務整理事件処理の規律を定める規程」という指針があり、債権者1社あたり2万円以下と定められています。商工ローンの場合は、1社5万円以下と定められています。
また着手金が無料でも基本報酬が高額、反対に着手金が高額でも基本報酬が無料など、事務所によって料金プランが異なる場合があるので注意が必要です。
減額報酬
減額報酬とは、利息制限法による金利の引き直し計算を行い、その結果債務が減額したことに対して発生する費用のことです。
また債権者との和解交渉の結果、借金の金額が減額された場合に、その減額分に対しても発生します。
一般的には、「依頼前の債務額」と「利息制限法で計算し直した債務額」の差額に対して発生する費用です。
減額報酬の費用の相場は「債務整理事件処理の規律を定める規程」で定められており、実際に減額になった金額の10%前後とされています。またこの減額報酬を取らない事務所もあります。
過払い金報酬
過払い金報酬とは、利息制限法による利息の引き直しにより、過払い金を回収できた時に発生する費用のことです。
利息制限法で定められた利息以上に運用していた貸金業者から、払いすぎた金額を取り戻すことができた時に発生します。
過払い金報酬の費用の相場は「債務整理事件処理の規律を定める規程」で定められており、訴訟があるかどうかによって異なっています。
訴訟がない場合は過払金回収額の20%前後、訴訟まで発展した場合は過払金回収額の25%前後が目安となっています。
任意整理は他の債務整理方法と比べて費用が安い
任意整理は、自己破産や個人再生と比較して費用が安く済むことがメリットです。
任意整理は裁判所を通さないことが特徴です。
債務者が依頼をした場合は弁護士や司法書士が債権者と直接やり取りをするため、手間を省くことができます。そのため、他の債務整理と比較すると費用が安く設定されています。
債務整理の中では、もっともデメリットが少なくて済む方法が任意整理です。
債務整理をしようと思ったら、はじめに任意整理で債務を整理できないか、弁護士や司法書士に無料相談をしてみることをおすすめします。
弁護士と司法書士の依頼する時の費用の違いとは
任意整理を弁護士や司法書士に依頼する際、どちらに頼めばいいのか悩んでいる方も多いでしょう。
費用だけを見ると、一般的に弁護士より司法書士に依頼をした方が安くすみます。しかし、司法書士の場合は借金額が140万円以下の案件しか扱えなかったり、簡易裁判所管轄の案件しか交渉権がなかったりと制約もあります。
その一方で債務整理に関しては司法書士の方が経験もあり、弁護士よりもむしろ詳しいといった場合もあるなど、一概にどちらがいいとは言えません。任意整理は借金をしている人にとって有利な内容で合意を得ることが目的です。
複数の事務所の無料相談を活用して、しっかりと交渉してくれる事務所を選ぶことが重要です。
任意整理の費用を分割払いや後払いしよう
弁護士や司法書士の費用は分割払いも後払いもできる
任意整理を法律事務所に依頼をした際、費用の支払いが苦しい場合は分割払いや後払いも可能になっています。
一括での支払いが厳しい方のために、法律事務所の業界では積立金制度というものが用意されています。これは任意整理の期間中に依頼費用を積み立てておく制度です。
任意整理中は債権者への支払いは停止されているので、その間に積み立てて分割で支払うことによって無理のない支払いができます。
任意整理で借金があるうえに、代理人費用も支払えないということがないように、費用を積み立てて分割か後払いで支払うようにしましょう。また分割・後払いを適用している事務所を選ぶようにすることも大切です。
万が一、支払いを滞納すると「辞任」されてしまうこともある
分割払いや後払いでも支払いが滞納している債務者は、代理人が辞任をしてしまう可能性があります。
辞任とは任意整理の代理人を担当している弁護士や司法書士が、その代理人の担当を放棄することです。
代理人の契約をする際、債務者と専門家は委任契約書を交わしますが、その契約書の中に「代理人は一方的に辞任することができる」という文があり、いつでも辞任する権利があります。
滞納することによって信頼関係を失ってしまい辞任により代理人不在になると、ストップしていた債権者からの取り立て・督促が再開する危険性があります。
代理人は債務者が経済的に楽ではない状態は把握してますが、その気持ちに甘えてはいけません。代理人の信頼に応えるためにも、しっかりと費用は支払うようにしましょう。
分割払いは無理のない範囲で行う
代理人への費用の支払いを滞納しないことは、任意整理を行う上で必須条件です。ですが、かといって分割払いの積み立てをする際、無理をして高い金額に設定することもやってはいけないことです。
任意整理によりただでさえ経済的に困窮している状態ですので、無理をして積み立てをしてはますます私生活を圧迫することになります。 そして無理をした結果、分割払い・後払いも滞納する恐れがあります。
そのため専門家への支払いは無理のない範囲で、専門家と相談をして計画的に行うことが重要です。
法テラスを活用することで費用を抑えられる
法テラスの民事法律扶助とは
任意整理をするには専門家である法律事務所へ依頼をする必要がありますが、この依頼費用を全額立て替えてもらえる制度があります。 それが「民事法律扶助制度」です。
民事法律扶助制度とは、国が総合法律支援法に基づいて設立した機関である日本司法支援センター(通称「法テラス」)が行っている公的な支援制度です。
この制度を利用することによって、経済的に困窮していて法律事務所へ依頼ができない方でも任意整理の手続きをすることができます。
さらに、通常の事務所への依頼で支払う費用よりも安くしてもらえるので、任意整理をする際はぜひ活用したい制度です。
この制度を利用するには、一定の収入と資産がなければいけません。その基準を満たせば利用することができます。
民事法律扶助の手続き方法
民事法律扶助制度を受ける手続きは、まず全国にある法テラスの最寄りのセンター、あるいは法テラスと契約している弁護士・司法書士事務所へ無料相談をします。
そして抱えている借金の種類を話し、ご自分の収入や資産などを証明できるもの、住民票、その他必要書類を提出します。その情報をもとに審査を行い、審査を通過すれば任意整理の援助が開始されます。
任意整理をしている期間は事務所へ法テラスが依頼費用を立て替えて支払いを続け、債権者との和解交渉が成立したら事務所への報酬金もすべて法テラスにより支払われ援助は終了します。
その後は、債務者が立て替えてもらった依頼費用を分割で法テラスへ返還します。通常の依頼料より少ない金額なので、毎月無理のない返済ができるはずです。
任意整理の専門家費用を少なくする際の注意点について
着手金や報酬金が無料の事務所を選ぶ時は事前に確認が大切
任意整理の費用は大きく別けて着手金と報酬金の2つに分けることができます。
着手金は原則として交渉を開始する前に支払う費用で、交渉の結果には左右されません。
一方で報酬金は和解交渉が完了するごとに債権者一社でいくら、もしくは減額成功した金額に対して何%という形で設定されています。
任意整理の報酬(費用)は基本的には法律事務所ごとに自由に決めることが出来るため、どちらか一方が「無料」という事務所もあります。
選び方によって費用を抑えることができますが、極端に安いケースは少なく、着手金が無料であれば報酬金の設定が高かったり、報酬金が無い場合は着手金が高買ったりすることが多いので注意が必要です。
追加料金がかからないか契約前に確認する
任意整理の費用は主に着手金と報酬金の二種類ですが、その他に実費として事務手数料や交通費、通信費などを請求する事務所もあります。
契約をする前に相談や見積もりを作成してもらう段階で、着手金や報酬金に含まれずに発生する用途が曖昧な費用が無いか必ず確認をしましょう。
費用を抑える目的だけでなく、実費を後から請求されてトラブルになるケースを予防する面もあります。事務所によっては「追加料金無し」とはっきり明言している場合もありますので、そこを基準に事務所を選んでみるのもおすすめです。
必ず見積もりを取って比較する
任意整理は裁判所を介さず直接債権者へ交渉することで、利息や月々の支払額の見直しを求めることの出来る手続きです。
ただし、知識の無い個人が直接交渉するのは難しく、弁護士や司法書士など専門家への依頼が必要になります。
一方で専門家費用には一般的な相場はあっても決まりが無く、事務所ごとに料金の設定額は違いがあり、どうしても費用に差が出てしまいがちです。
専門家費用を抑えたいのであれば、事務所によっては無料相談を受け付けているところもあるので複数の事務所で無料相談を行い、見積もりを取って相場を比較するのが大切です。
”自分で特定調停を行えば費用を安くできる
自分で任意整理を行うことは基本的にはできない
任意整理は裁判所を介さない任意の交渉事であって、厳密には法的手続きとは言えず債務者自身が行うことも可能です。弁護士などに依頼しない分費用の削減ができます。
しかし、債権者にとっては任意の話し合いに応じる義務はなく、自分で行おうとしてもそもそも相手にされない事が多いです。任意整理では、過去の取引履歴を開示請求して取り寄せる必要があります。
個人からの請求であっても開示する義務があるので、取引履歴の取り寄せ自体は可能ですが、専門家でないと甘く見られ、書類の提出を求めるなどの理由をつけて時間を稼いでくることも少なくありません。
こうしたことから任意整理を自分で行うのはあまり現実的ではないと言えるでしょう。
特定調停とは
裁判所を介した任意整理とも言われるのが特定調停です。
2000年2月に施行がスタートしたまだ新しい制度で、任意整理と同じように債権者を選んで交渉を進め、借金を減額してもらう手続きです。
特定調停は費用が非常に少なくて済むというメリットがあり、任意整理を自分で行うのが難しい場合は、代わりの手続きとして利用できます。
簡易裁判所に申し立てを行うことで、弁護士や司法書士の代わりに調停委員が仲介をしてくれます。
申し立ての条件は、現状のままでは借金返済が難しくなるのが予想される人で、継続して収入を得られる見込みがあり、減債後の借金を3~5年で返済できる人が対象となります。
特定調停の費用
特定調停にかかる費用は、一社に付き500円の申立て手数料(印紙代)と420円分の郵便切手代となります。
簡易裁判所によっては多少の違いはありますが、一社当たり1000円ほどと考えることができるでしょう。
任意整理を弁護士に依頼すると着手金だけでも一社当たり3~5万円と言われており、これに比べると大幅に費用を削減できます。
基本的に債権者の住居を管轄する簡易裁判所に、これらの費用と必要書類を提出して申立てを始めます。もし交渉の中で郵便切手代が不足すれば追加で納付することになり、余れば返してもらえます。
特定調停を行う際の注意点
任意整理に比べると、特定調停は手続きが面倒だというデメリットがあります。
特定調停では裁判所に何度も足を運ぶ必要があり、調停委員は債務整理の専門家ではないため最適の方法で決着が付くとは限りません。 そもそも交渉が不成立に終わることもあります。
任意整理では、専門家の受任通知が債権者に届いた時点で取り立てが止まりますが、特定調停では申立てが裁判所に受理されて、債権者に通知が行くまで取り立てが止まりません。
また、もし過払い金が発生していても同時に手続きを進めることができないので、別途請求を行わなくてはなりません。
裁判所が介入するため家族に知られる可能性が高く、ブラックリストにも載ります。
裁判所が和解後の返済について定める「調停調書」は裁判の判決と同じ効果を持ち、滞納すれば強制執行が行われる可能性があります。
このように特定調停にはデメリットも多いので、費用が安いからと安易に選ぶのではなくその他のメリットが大きい時のみ利用しましょう。
まとめ
任意整理は、比較的安い費用で借金負担減額の手続きができる債務整理の方法です。
しかし、弁護士や行政書士に交渉の代理を頼む場合は、相談金や着手金のほかにも減額報酬や過払い金報酬などの費用が発生します。
もし費用を支払うことが難しい場合は、分割払いや後払いができる事務所を探して依頼するようにしましょう。もしくは法テラスの民事法律扶助制度が使えないか、確認してみてください。
任意整理の交渉は法律家への代理依頼をせずとも行えますが、専門的な知識が求められるため、個人で行うには難しいです。
ただし、自分で任意整理を行ってコストを抑えたいという方は、特定調停を検討してみてください。
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